失業などによって家賃を支払うことができない場合、もしくは、今後払うことができなくなりそうな場合には「住居確保給付金」の申請を考えましょう。
期限付きで家賃相当額の給付を受けることができるため、住まいの心配をすることなく再就職などに専念できます。
また、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、2020年4月20日から制度の対象者が拡大されています。
以前は住居確保給付金を利用できなかった人も対象になっている可能性があるのです。
この記事では住居確保給付金の対象者、いつ・いくら支給されるのか、どのように申請するのかについてまとめました。
「家賃の支払いが厳しくて、このままだと追い出されそう…」
このような不安を持っている方は、ぜひ住居確保給付金の申請を検討してください。
目次
住居確保給付金とは?
住居確保給付金は「失業などによって住まいの確保が難しい状態にある人への給付金」です。
生活困窮者自立支援制度の1つで、住む場所だけでなく、仕事なども含めて総合的なサポートを受けられます。
- 自立相談支援事業
- 住居確保給付金の支給
- 就労準備支援事業
- 就労訓練事業
- 家計相談支援事業
- 生活困窮世帯の子どもの学習支援
- 一時生活支援事業
申請や相談は住んでいる市区町村の自立相談支援機関です。
住居確保給付金は企業で働いていて失業した人だけでなく、個人事業主の方、フリーランスの方も利用可能です。
まずは自治体の自立相談支援機関で相談をしましょう。
住居確保給付金で支給される金額
住居確保給付金では賃貸住宅の家賃に相当する額が給付されます。
ただし、給付額には上限が決められており、上限は住んでいる自治体、世帯の人数などによっても違うので注意が必要です。(住宅扶助特別基準額が上限です。)
例えば、東京都の1級地の場合には、以下のようになります。
世帯の人数 | 支給額上限の目安 |
単身世帯 | 53,700円 |
2人世帯 | 64,000円 |
3人世帯 | 69,800円 |
住居確保給付金が支給される期間
住居確保給付金は再就職が決まるまでの給付を想定しているため、ずっと家賃相当額の給付を貰えるわけではありません。
住居確保給付金は原則3ヶ月の期間限定です。
ただし、しっかりと求職活動をしているのにも関わらず再就職できないような場合には給付期間を3ヶ月延長する(最大で9ヶ月まで)ことができます。
住居確保給付金を利用するための条件
住居確保給付金は失業などによって家賃を払うことができず、住居を失う危険性がある(すでに住む場所がない)という方のための給付金です。
この住居確保給付金には、支給対象者になるための4つの条件、そして実際に給付を受けるための3つの要件があります。
また、冒頭でも話しましたが、2020年4月20日から対象者が拡大されました。
例えば、以前は「申請日において65歳未満」という年齢制限があったものの、現在は65歳以上の方も対象になります。
それでは、支給対象者になるための条件から確認していきましょう。
支給対象者になるための4つの条件
住居確保給付金の支給対象者になるためには次の4つの条件があります。
- 離職や廃業などから2年以内であること
- 離職等の前に世帯の生計を主に維持していたこと
- ハローワークで求職申込をしていること
- 国の雇用施策による給付等を受けていないこと
①離職や廃業などから2年以内であること
条件の1つ目は離職や廃業などから2年以内であることです。
また、今回の新型コロナウイルスのような止むを得ない事情による場合であれば、休業による収入減で休業・廃業と同程度の状態になっても対象になります。
厚生労働省では次のように表現が使用されています。
給与等を得る機会が当該個人の責任に帰すべき理由・当該個人の都合によらないで減少し、離職や廃業と同程度の状況にあるもの
これは新型コロナウイルス感染症のように経済情勢、社会情勢の変化によって収入が減ってしまった場合を指します。
フリーランスの方などは「離職や廃業と同程度」の判断が難しいケースもあるでしょう。
この点はもともとの状態なども考慮した上で判断されるので、完全に仕事がなくなった状態を指すわけではないです。
②離職等の前に世帯の生計を主に維持していたこと
住居確保給付金は世帯単位での支給です。
そのため、「離職・廃業の以前に世帯の生計を主に維持していたこと」というのも条件になります。
例えば、夫が主に生計を維持していて、扶養の範囲内でパートをしていた妻が解雇されたというようなケースでは対象にならないでしょう。
③ハローワークで求職申込をしていること
住居確保給付金は求職期間中の生活を安定させるのが目的なので、ハローワークでの求職申込も必要になります。
ただし、厚生労働大臣によってこの条件が撤廃される予定であることが発表されました。(2020年4月30日から変更になる予定)
新型コロナウイルスの感染が拡大する中で、ハローワークでの求職申込という条件が厳しいという指定を受けての対応だと思われます。
また、フリーランス、個人事業主の方などは住居確保給付金を受給するにあたり、今の働き方を継続できなくなるわけではありません。
もちろん、必要に応じて就職するための支援は受けられますが、企業による雇用を前提とした制度ではないのです。
④国の雇用施策による給付等を受けていないこと
すでに国の雇用施策による給付を受けている場合、住居確保給付金を同時に受け取ることはできません。
心配な人は自治体ごとの相談窓口で条件を満たしているのか確認した方が良いでしょう。
3つの支給要件
住居確保給付金を受け取るには先に紹介した条件に加えて、次の3つの要件を満たす必要があります。
- 収入要件
- 資産要件
- 就職活動要件
収入要件と資産要件については住んでいる地域や世帯人数によって異なるので注意が必要です。
また、就職活動要件は以前よりも緩和されています。
先ほどの申込条件でも説明しましたが、ハローワークでの求職活動については今後変更される予定なので最新の情報を確認するようにしてください。
収入要件
「申請月の世帯収入合計額が基準額と家賃額の合計以下であること」が収入要件になります。(基準額は市町村民税均等割が非課税となる収入額の1/12)
ただし、家賃額は住宅扶助特別基準額が上限で、住んでいる場所によって異なります。
例えば、東京都の1級地では次の金額が目安になります。
世帯の人数 | 目安額 |
単身世帯 | 13.8万円 |
2人世帯 | 19.4万円 |
3人世帯 | 24.1万円 |
資産要件
収入だけでなく、世帯の預貯金合計にも要件があります。
この資産要件は「申請時点における世帯での預貯金額の合計が基準額の6倍以下であること」です。(ただし、100万円を超えない額であること)
先ほどと同じように東京都の1級地を例に目安額を紹介します。
世帯の人数 | 目安額 |
単身世帯 | 50.4万円 |
2人世帯 | 78万円 |
3人世帯 | 100万円 |
就職活動要件
最後は就職活動に関する要件です。
従来は「ハローワークでの月2回以上の就業相談」と「自治体での月4回以上の面接支援等」が要件になっていました。
ただし、現在の新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえて以下のように条件が緩和されています。
従来の要件 | 現在の方針 |
ハローワークでの月2回以上の就業相談 | 回数を減らす、もしくは要件から外す |
月4回以上の面接支援等 | 来庁が困難な場合には電話などで状況の報告 |
新型コロナウイルス感染症によって緩和された利用条件のまとめ
新型コロナウイルス感染症に関連して2020年4月20日以降で撤廃、緩和されている条件・要件をまとめました。
- 65歳未満の年齢制限は撤廃済み
- 失業・廃業以外に休業による収入減少も対象
- ハローワークでの求職活動要件の緩和(今後、撤廃の予定)
大きくは以上のような点が変更になっています。
従来の住居確保給付金の対象者は失業・廃業によって家賃の支払いが困難になった方でした。
しかし、現在は職場が休業しており収入が減少しているケースなども対象になり、ハローワークでの求職活動についても条件が緩和されています。
以前よりも対象者がかなり拡大されていると思って良いでしょう。
住居確保給付金の申請方法
住居確保給付金は住んでいる自治体の自立相談支援機関で受給の相談・申請をします。
申請時にはいくつかの必要書類があり、要件を満たしていることの確認が取れてからの支給になるのです。
住居確保給付金は家賃相当額の支給ですが、受給が決定した場合には、自治体が大家などに代理で支払いをします。
給付金を申請者が直接受け取るわけではないので覚えておきましょう。
「家賃の支払いが困難になっている場合」と「すでに住む場所がない場合」とでは受給開始までの流れが異なります。
相談先は同じ自立相談支援機関ですが、用意する書類などが異なる場合もあるので注意してください。
住居確保給付金の申請に必要な書類
自治体などでも多少の違いがあるかもしれませんが、住居確保給付金の申請には「生活困窮者住居確保給付金支給申請書」に加えて次のような書類が必要になります。
- 本人確認書類・・・以下のいずれかの写し
- 運転免許証
- 住民基本台帳カード
- パスポート(および住所を確認できるもの)
- 健康保険証
- 各種福祉手帳
- 住民票
- 住民登録証明書
- 戸籍謄本
- 離職関係書類・・・離職後2年以内であることが確認できる書類、または失業・廃業と同程度に収入が減少していることの確認ができる書類の写し
- 収入証明書・・・申請者、および同一生計者の収入を証明する書類
- 金融資産関係書類・・・申請者、および同一生計者の預貯金通帳など
住居確保給付金が支給されるまでの期間
公的な支援制度は手続きに時間がかかるものも多いですが、家賃の滞納により住む場所がなくなってしまうと求職活動もままなりません。
そのため、手続きに不備がなくスムーズに審査が進めばおよそ2週間での支給開始になります。
制度の対象者が拡大されているので、家賃の支払いに困ったら早めに相談をしましょう。
【まとめ】年齢制限の撤廃、求職活動要件緩和など。住居確保給付金がより申請しやすい制度に
住居確保給付金の利用条件はかなり緩和されており、以前よりも多くの人が制度の対象になります。
とくに失業や廃業だけでなく、休業などによって収入が減少したようなケースも対象になるようになった点は大きな変更でしょう。
もし家賃の支払いが厳しいのであれば、家賃を滞納してしまう前に住んでいる市区町村の自立相談支援機関で相談・申請をするようにしてください。