勤続年数が長くて、年収もあって、ローンも特になくて…住宅ローンを検討するのは、全ての条件が揃っている人ばかりではありません。
今回は、私が経験した審査が通りにくい例とそのその対策法を紹介します。
目次
パターン別|審査が通りにくい場合原因と対策
新卒で就職して間もない新社会人
転職して間もない住宅ローンの審査では、前職との繋がりや、転職理由なども聞かれ、よほど給与が上がるなどの条件でもない限り、審査では不利になります。
ですが、新卒ということは、転職と違って、そもそもの職歴がありません。また、新卒では給与が低いのも当然ですし、社会的信用度もまだ高くはありません。
若さについての評価は、銀行によって2パターンあります。
一つは、あまりに若い(20代前半)のは、審査において不利と見るパターン。
もう一つは、返済期間も長くなるので、若いというのは、不利とは見ないパターンです。
定年間際よりは、若い方が通りやすいですが、若い人で転職回数が多かったりすると、仕事が続かない人として見られてしまうことがあります。
そんなときでも審査が不利にならないのが、フラット35です。
フラット35の基本的な姿勢は、勤続年数や職種などではなく、年収が足りるかということ。
勤続年数何年以上という規定はありませんが、勤続が1年未満であれば、月収×12ヶ月を年収として審査します。
変動金利よりもフラット35は高いから敬遠されることもありますが、35年という長い期間で見れば、生涯ずっと毎月の返済額が変わらないということなので、月収が変わらない限り、家計に及ぼす影響は少なくて済みます。
全期間固定金利以外は、10年後や20年後に金利がどうなっているかは分かりません。
最初だけ金利が著しく低い住宅ローンもあるので、10年固定金利や変動金利を選んだとしても、ずっと返済額が変わらないとは言えません。
フラット35は年収が低いときこそ、万が一の変わらない安心が必要になるのです。
来年から産休、育休予定の夫婦
この夫婦に関しては「今年しか、買えません」とお伝えしました。理由は大きく二つあります。
■ 1:旦那様が独立という形で自営業になる予定であったこと
については、基本的には自営業には銀行の審査が厳しいということもあり、自営業になってからの住宅ローンは非常に困難になってしまうことを伝えました。
しかも、自営業になったとしても、住宅ローンの審査のためには、3年連続で黒字経営+所得を計上する(納税する)しなければなりません。
自営業でありがちな、経費で落として所得がほとんどなし、というのは住宅ローンにとって致命的。
利益が1000万円あっても、経費として処理していれば、審査では所得なしにしかなりません。
収入が不安定である点が自営業は弱いのです。接客していると、今年から独立して…という方は度々いらっしゃいましたが、独立前なら住宅ローンの審査もできたのに、という結果になってしまいます。
■ 2:奥様の所得が育休期間は減ってしまうこと
育休期間でも以前の年収での審査は可能な銀行もありますが、基本的には嫌がられます。
ただ、復職や転職に有利であるという見方から、看護師などの資格があると、産休や育休の取得(または予定)でも非常に審査に強く、有利に働くことがあります。
このご夫婦は、育休・産休前だったため、従前の年収で審査をしてもらいました。
休職期間がある
前年の年収が低く、住宅ローンの借入額には足りなかったため、前々年の源泉徴収票も提出してもらい、年収に差があったことから、休職期間があることを伺った例です。
年収に大きな開きがあると、その理由を銀行からは確認されます。そして、休職期間があるとき、銀行は病気を疑います。
病歴は完治していても、団体信用生命保険の告知事項に引っかかる可能性があり、銀行は心配します。
このケースの場合は、具体的に診断名が下っていなかったため、住宅ローンは休職前の年収での審査ができましたが、診断書があった場合は、ワイド団信の検討も必要でした。
住宅ローンの審査において年収が分かる資料で提出するのは、最新の源泉徴収票と住民税決定通知書(自営業であれば納税証明書)です。
フラット35では、直近の2年分が必要で、年によって年収に差がある人は要注意です。
日給月給制の場合
日給月給制は不可という銀行があります。日給月給だと、月によって収入が不安定であるからです。
ただ、普通は、日給月給制かどうかは聞かれません。
正社員か、契約社員か、パートなのかということは確認されますが、1年に1回の源泉徴収票に日給月給制については、明記されておらず、銀行が知ることはできません。
私が接客したケースでは、丸1年分の勤続がなく、源泉徴収票が提出できないという状況でした。
源泉徴収票が出ない時、または丸1年分の源泉徴収票ではない場合には、可能な限りの毎月の給与明細を提出することになります。
給与明細を提出すると、日給月給制だということが分かるため、銀行に断られてしまうのです。
結果として、このケースでは、勤続年数を長くして、源泉徴収票を提出できるようになったら、審査を行うということになりました。
日給月給制が絶対に審査が通らないというわけではなく、住宅ローンの借り入れ希望額に見込みの年収が足りているのであれば、フラット35で審査が可能です。
変動金利がいい場合は、丸1年分の源泉徴収票を取得してから審査する方が良いでしょう。
2つ目の住宅ローン
住宅ローンは低金利の代わりに自宅購入目的のためにしか使えません。
自宅=1人に一つです。
転勤などによって本拠地が変わり、自宅が新たに必要になるということもあるかもしれませんが、2つ目の住宅ローン、いわゆる2重ローンはやや厄介です。
メガバンクでは、返済能力さえ認められれば2重ローンは可能ですが、地方銀行などは2重ローンが不可です。
私が経験したケースは、現在の自宅である一戸建てを売却して、マンションに引っ越したいというお話で、引っ越し先を購入してから、売却をするため、一時的に住宅ローンが2つになるという状況でした。
2重ローンの中でも、1件目の売却を検討している、自宅を賃貸にしていない、年収が足りているなど、条件を満たしていたため、審査が通り一時的な2重ローンが認められました。
しかし、2重ローンをしなければならない人には、すでに自宅を賃貸に出していたり、1件目の自宅はそのまま残したいというケースが多いため、継続的に2重ローンを続けたい人の住宅ローンの方法を説明します。
■ 1:同じ銀行で借りたい
1件目の自宅で審査が通ったので同じ銀行で借りたいと思う事は自然だと思います。
ただ、これにはリスクがあって、1件目の自宅はどうなりましたか?という質問が必ず来ます。
売却済みであれば、それほど問題ではないのですが、まだ所有していたとき。
不動産の所在地さえわかっていれば、法務局で誰でも、登記記録を取得することができます。
登記記録には、所有者はもとより、住宅ローンがあれば借り入れ先の銀行が記載されます。
個人信用情報にも借入は残っているので、いずれにせよ2重ローンということは必ず銀行は知ることができます。
すでに融資をしている自宅を今後どうするのかという確認がされるのです。
ここで、簡単に「賃貸に出して家賃収入を得ています」というと住宅ローンの契約としては、実は良くないのです。
■ 2:家賃収入があった場合
1件目の自宅は売却の予定があり、仲介を依頼している場合は比較的問題ではないのですが、実は賃貸に出して家賃収入を得ている時が問題です。
住宅ローンは自宅として使用することを条件に借り入れをしています。
賃貸=投資用ローンで借りるべきであって、賃貸に出すことは銀行との契約に抵触してしまうのです。
さらに、賃貸に出しているとき、確定申告をして納税をきちんとしている人と、収入を得ているにもかかわらず無申告の人の2パターンがありますが、後者の場合は、銀行に知られてしまったとき、住宅ローンの審査は通らなくなります。
また、指摘を受けてから慌てて確定申告をしても、審査が通るとは限りません。
納税をしていないとみなされるからです。
銀行によっては、セカンドハウス用住宅ローンという商品があるので、2件目はセカンドハウスとしてローンを探すか、1件目とは別の銀行、それもメガバンクを検討するのが良いでしょう。
■ 3:返済比率が収まるか
返済比率とは、年収に対して、住宅ローンの他、車のローン、クレジットカードの分割払いなど、あらゆる借り入れの返済額が所定の範囲内に収まるかということです。
借り入れ額にもよりますが、2つの住宅ローンを返せるだけの年収がなければなりません。
まとめ:1つくらい条件が悪くても審査は通る
経験上、審査項目のうち、いくつも満たされない条件があると審査は通りません。
私が感じたのは、銀行が最も厳しいのは、納税関連と個人信用情報関連がダメなとき。
これ以外は、なんとか審査が通ることが多いと感じました。
年収が圧倒的に低くない限り、勤続年数が短かったり、頭金がないということだけで、住宅ローンを諦める必要はないでしょう。