医療費控除とは、いわゆる所得控除と呼ばれる制度のうちの一つです。
この制度は、納税額から一定額が差し引かれる住宅ローン控除とは異なり、超過した医療費の分を所得額から差し引く仕組みになっています。
所得が年間300万円の人で、その年の医療費が30万円だった人を具体例として挙げます。
税務上の所得額は、医療費の30万円から10万円を差し引いた20万円分が減らされます。
すなわち、この人の所得は年間280万円として、所得税や住民税の額が計算されます。
その結果、所得税を払いすぎていた場合には、申請をすれば税金が還付されて戻ってくることになりますし、翌年の住民税の額も安くなるのです。
医療費控除によって減らされる所得の額は、年間所得によって変わってきます。
総所得が200万円以上の人は、医療費の総額から10万円を差し引いた額。200万円未満の人は総所得の5%を上回った分の医療費が、所得額から控除されます。
医療費に含まれるものは、病院で支払った入院費や治療費のほか、薬代、介護施設を利用した際の費用、針灸治療の施術対価などです。
ただし、高額療養費や、生命保険や損害保険などによって補てんされた医療費分については、所得控除の対象には含まれません。
気を付けておきたいことは、かかった医療費がそのまま戻ってくるわけではない点です。
所得控除というのは、あくまでも税金を計算する時の課税所得金額が少なくなるという制度になります。
しかし、所得税と住民税のどちらも減額されることになるため、所得額によっては大きな節税効果が出てきます。
現在コロナウイルス感染症の流行により、控除を受ける際の確定申告は当初の延期された4/16以降も取り扱うようになりました。今回の再延期に対する諸注意やcovid-19に関する公的融資制度をまとめた記事を用意していますので、一度ご確認ください。
住宅ローン控除と併用するメリットは
二つの制度を併用するメリットについて書く前に、まず住宅ローン控除について簡単におさらいをしてみましょう。
住宅ローン控除というのは、住宅ローンを契約して住宅を購入した人が、所得税や住民税の控除を受けられる制度です。
この制度では、納めるべき税金の額が決まった後に、そこから一定の金額が差し引かれるという仕組みになっています。
この時控除される税金の額は、現在借り入れをしている住宅ローンの年末残高の1%です。
住宅ローン控除と医療費控除では、納税額が決定してから税金が差し引かれるか、最初に課税所得額が減らされるかの違いがあります。
住宅ローン控除では、利用者の所得額に関係なく、契約中の住宅ローンの残債額によって控除される金額が決まってきます。
契約1年目の住宅ローンに、3,000万円の返済金が残っているケースでは、特定取得の条件に該当すれば、税金から控除される額は3000万円の1%の30万円です。
この額は、年間所得が1,000万円の人も、300万円の人も変わらないので、所得が少ない人ほど、所得額にしめる控除額の割合が大きくなってくるのです。
医療費控除の場合には、課税される所得額そのものが減らされるという仕組みになっています。
そのため、医療費控除とともに住宅ローン控除を利用した場合、住宅ローン控除によって差し引かれる税金の控除額が、所得に対して占める割合が増える結果になります。
このことは、二つの制度を併用することで、住宅ローン控除の節税効果が相対的にアップすることを意味しています。
そして、一度決めた住宅ローンの借り換えをめんどくさがらずに検討していくことで、より総支払額を少なく住宅ローンを完済する道に近づくでしょう。
実際にどれくらいの額が節税になるか
最後に、具体例を挙げて、住宅ローン控除と医療費控除の相乗効果について見ていくことにしましょう。
年間所得500万円の人が2,500万円の住宅ローンを契約した場合を想定してみます。
まずは、特定取得によって住宅を購入した際の、住宅ローン控除による税金の控除額です。
この時、所得税の税率には20%が適用され、基礎控除や所得税の控除額を合わせて計算すると、約57万円の所得税がかかることになります。
契約1年目では住宅ローンの元金はそれほど減っていませんから、年末時点で2,500万円を少し下回る残高があったとすれば、控除額は約25万円という金額です。
すなわち、利用者が支払うべき所得税の額はおよそ32万円になります。
次に、がんなどの病気にかかって、年間で200万円の医療費がかかった場合について考えてみます。
医療費控除の制度を利用することで、年間所得は310万円まで減ることになります。この時の所得税の税率は10%です。
同じように所得税の額を計算してみると、年間で約21万円という結果が出ます。
住宅ローン控除の額は約25万円で変わりませんから、利用者が納めるべき所得税には、差し引き4万円の超過分が生じます。
所得税から控除しきれなかった超過分は、住民税から差し引かれるため、所得税の全額が控除された上で、住民税も約4万円の控除が発生します。
病気にかかることは、決して嬉しいことではありませんが、万が一の場合にはこうした制度を利用することで、家計への負担を減らすことができるのです。
憧れのマイホームが夢で終わることのないよう、借り換えを含め便利な制度はぜひ有効に活用したいものです。