何より安定した定期収入がポイント
実は住宅ローンの審査において、返済者の支払い能力がポイントのため、母子家庭か、そうでないかといったことはあまり重要ではありません。
よって、独身か既婚かシングルかということではなく、安定した収入とそれに見合った返済能力があることが認められれば、住宅ローンの審査は通りやすくなります。
母子家庭であっても正社員として安定した収入がある場合は、信用度が高いと見なされるのであまり心配はいらないでしょう。
とはいっても母子家庭の場合、正社員比率は低めで、実際には派遣社員やパート雇用である場合が多いのも現実ですので、この場合は、正社員に比べて雇用が不安定とみなされます。
正社員に比べて単に収入が低いということだけではなく、解雇などのリスクが高いからです。
しかし、そのような立場であっても同じ勤め先で勤続年数が一定以上、具体的には3年以上、理想としては5年以上ある場合は信用度が増します。
非正規雇用であっても、まじめに勤め続けているという実績が信用として評価されるからです。
このような場合は、たとえ年収が300万円以下であったとしても、住宅ローン審査が通る可能性が大いにあります。
まずは、下準備として勤続3年以上をめざすことが大きな一歩となり、そしてこの下準備の間にすべきことは、貯蓄です。
将来、住宅ローンを組むとしても頭金も用意しておくことにより、借り入れ額を減らせ、ローンの利息分の支払いが減らせるメリットがあります。
また頭金が大きければ、その分借り入れ額が減るために、審査が通りやすくなるというメリットもあります。
審査を通りやすくするポイントと返済方法
前述した安定した定期収入の部分がクリアできたら、いよいよ住宅ローンの申請です。
ここで審査を通りやすくする第一のポイントは、収入に対する借入額の割合です。
まずは、購入する物件の金額を押さえる努力をします。新築だと4000万円だったとしても、中古なら2000万円かもしれません。
次に頭金の準備で、物件の10パーセント程度は用意したいものです。
頭金が多ければその分、借り入れ額が小さくなるため審査基準が低くなります。
同様に、もしも親から援助をしてもらえるようであればお願いしてみてもよいでしょう。
一定額まで相続無税などの措置がとられている場合もあるので、事前に住宅ローンの会社に確認してみることも必要です。
次に返済の計画ですが、返済負担率は年収の30パーセント以下におさえなくてはいけません。
300万円であると過程すると、返済できるのは一般的に金利も含めて年90万円が限度です。
このような場合どうしても返済期間が長くなる傾向にあり、20年計画や30年計画といった具合になります。
このとき、気になるのは金利ですが、金利には変動型と固定型があり、近年の日本の金利をみていると変動型の方が利率が低く、一見お得なようにみえがちです。
しかし年収300万円程度の非正規雇用の母子家庭の場合は、この先の劇的な収入UPは考えにくいとされます。
一方変動金利は、物価上昇にともなって急激にあがるリスクもあります。
よって、確実に現在の収入の範囲(場合によっては減収も視野にいれて)で無理なく計画的に予定できる返済方法、つまり固定金利をとるのが大切です。
幸い固定金利も長い歴史でみると近年は低い傾向にあります。
離婚して元夫の名義だった住宅を引き継ぐ場合
離婚しても元夫が住宅ローンを支払いつづけ、母子家庭でその家に住み続けるということも可能ですが、これには将来のトラブルが全くないわけでもありません。
というのも、なんらかの理由で残りの住宅ローン期間中に元夫が返済能力を失ってしまった場合や、返済しなくなってしまった場合に、家が抵当に入って出て行かなくてはならなくなるなどの事態もあり得るからです。
そこで、可能であれば住宅の名義と住宅ローンの両方を自分で引き受けたいという人もいますが、ここで問題になるのがローン会社(銀行)です。
この場合の住宅ローンは元夫の返済能力を見込んだ契約であるので、単純にローンの名義変更をしようとすると妻にも同等以上の安定収入や返済能力を求められ、この審査は非常に厳しく、認められるケースは少ないといわれています。
そこでより現実的な対策としては、残っている残債について、あらためて妻の名義で住宅ローンの借り換え申請をする方法があります。
夫の単独名義になっていたり、共有名義になっているローンをまずは一括返済の形をとり、その上であらためて妻名義でローンを組み直すことで、すっきりとした財産管理ができるのです。
このときは、純粋に妻名義での審査となるので、元夫とは全く関係なく、妻の返済能力に見合ったローン計画での審査となります。
月々の返済額は少額にし、固定金利にする、また長期返済計画にしていくなど工夫が可能です。
審査を通過するには一般的なものと同様、非正規でもよいので勤続3年以上などの安定した雇用実績と、無理のない返済計画であることが重要です。
元夫に一括してある程度残債を払ってもらうなど交渉の余地もあるかもしれませんが、借り換えによるローンの名義変更も一度検討してみることをおすすめします。