住宅ローンを少しでもお得に返済していきたい。大きな負債を抱える身としては、早く返済したい気持ちはも含めて、精神的にも、金銭面でもラクになりたいと思うのは当たり前ですよね。
現在契約している住宅ローンの金利負担を軽減する方法は大きく2つあります。
1つは、住宅ローンを別の金融機関で契約し直す「借り換え」、もう1つは契約中の住宅ローンを繰り上げ返済して、借金の元金を減らし、金利の支払期間、または支払い総額を減らす方法です。
住宅ローンの負担を軽減するのに、どちらが効果的でお得なのでしょうか?
目次
借り換えで得をするには
住宅ローンは返済期間が長いため、わずかな金利の差でも何十万円や何百万円もの利息の負担が変わってきます。
そこで現状よりも金利が低い住宅ローンに借り直すことで、利息の負担を減らせることがあります。
金利が低いことはもとより、残高によっても利息削減効果は開きがあるため、残りの返済期間が長いほど返済を楽にできる可能性が高まります。
借り換えには今の住宅ローンをすべて完済することになるので、そのための費用と新しい住宅ローンの契約にも費用がかかります。かかる費用よりも利息を削減できれば得になります。
繰り上げ返済で得をするには
繰り上げ返済には一部繰り上げ返済と全額繰り上げ返済があります。ここでは一部繰上げ返済を取り上げます。
毎月の住宅ローンの返済に加えてまとまった金額を一度に返済し、返済の終わりを早めたり、毎月の返済額を減らしたりできます。
繰り上げ返済では、元金のみを返済することができるので将来払う予定であった利息部分を払わずに済みます。この払わずに済んだ利息が繰り上げ返済で得できる部分です。
住宅ローンの借り換えと繰り上げ返済の比較
借り換えと繰り上げ返済は状況によって損得が変わってきます。例題を見ていきましょう。
▼ 【例題】住宅ローンの契約内容
借入金額 | 3,000万円 |
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借入年数 | 35年 |
金利 | 年1.5% |
特記事項 | 元利均等返済、ボーナス併用なし |
返済予定額(金利含む) | 約3,850万円 |
※下記の例では、借り換え、一部繰り上げ返済のいずれも戻り保証料は考慮しません。返済期間中の金利の変動もないものとします。手数料や保証料は三菱UFJ銀行を参考にしています。
例題1:住宅ローンを5年で借り換えた場合
まずは、住宅ローンを5年間(支払い回数60回)経過した時点で借り換えをおこなうのと、借り換えにかかる費用と同程度の現金で一部繰り上げ返済をおこなった場合を比較してみます。
なお、この条件でボーナス払いの併用はせずに、毎月返済のみを続けたときの5年後(支払い回数60回時点)の住宅ローンの残額は、約2,660万円ほどです。
▼ 住宅ローンを借り換えする時点の状況や条件
- 借りてから5年後にローン残額の2,660万円を借り換える
- 借り換え後の金利は年1.2%(0.3%金利が下がる)
- 新しい住宅ローンの借入期間は30年
▼ 借り換えに伴う諸費用
- 既存の住宅ローンの全額繰り上げ返済手数料:16,200円
- 司法書士の費用:約200,000円(登録免許税は106,400円、抵当権の設定と抹消の報酬)
- 保証料:509,044円(30年借入元利均等返済、100万円あたり19,137円)
- 手数料:33,000円
- 印紙代:20,000円
▼ 実質にお得になる金額
借り換えに伴う諸費用の合計 | 約777,644円 → A |
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借り換えで軽減される利息 | 1,380,240円 → B |
B-A=実質にお得になる金額 | 約602,596円 |
▼ 借り換えで実質お得になった分で一部繰り上げ返済をする
先の借り換えにかかる費用と同程度の現金(777,644円)で、一部繰上げ返済を期間短縮型でおこなった場合に軽減される利息は426,755円です。
期間短縮型なので、当初の借入期間35年よりも1年1ヶ月の返済期間が短縮されます。
▼ 【結果】返済期間が5年の時点では借り換えがお得に
このケースだと、住宅ローンの支払いを開始してから5年と間もないため、費用を70万円ほどかけて金利の差0.3%程度でも借り換えた方がお得な結果となりました。
借り換え前と後で金利の差がより大きいと、更なる利息削減も期待できます。
例題2:住宅ローンを20年で借り換えた場合
住宅ローンを契約してから年月が経過している場合、例題1とは異なる結果になります。
例題2として借入から20年後に借り換え、一部繰上げ返済をすると仮定して見てみましょう。
新規借り入れから、金利は年1.5%で返済を続けた場合は、20年(支払い回数60回)時点でローンの残高は約1,479万円になります。
※ボーナス払いは無しとする。
▼ 住宅ローンを借り換えする時点の状況や条件
- 借りてから20年後に残高の1,470万円を借り換える
- 借り換え後の金利は年1.2%(0.3%金利が下がる)
- 新しい住宅ローンの借入期間は15年
▼ 借り換えに伴う諸費用
保証料と登録免許税以外の費用は変わりません。
- 司法書士の費用:約15万円(登録免許税は58,800円、抵当権の設定と抹消の報酬)
- 保証料:176,135円(15年借入元利均等返済、100万円あたり11,982円)
- 既存の住宅ローンの全額繰り上げ返済手数料:16,200円
▼ 実質にお得になる金額
借り換えに伴う諸費用の合計 | 約394,735円 → A |
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借り換えで軽減される利息 | 464,040円 → B |
B-A=実質にお得になる金額 | 約69,305円 |
例題1と比較してみると、住宅ローンを支払ってから20年経過後の借り換えは、残りの返済期間が15年になるため、利息の削減効果が減っています。
▼ 借り換えで実質お得になった分で一部繰り上げ返済をする
一方で同じ時期、借り始めてから20年後に現金394,735円で、期間短縮型の一部繰上げ返済をすると利息削減効果は91,564円で35年の返済期間が5ヶ月短縮されます。
【結果】20年返済している場合は繰り上げ返済のほうがお得に
住宅ローンの返済開始から20年も経つと、借り換え後のあらたな金利との差が0.3%程度であれば、残りの15年を借り換えるよりも一部繰上げ返済に回した方が良さそうです。
借り換えや繰り上げ返済をするタイミングと金利の差がポイント
2つの例題で住宅ローンの借り換えと繰り上げ返済の比較をおこなった結果、金利の差にもよりますが、何十万円のまとまった現金を出せるのであれば、借り始めてから数年の間は金利の差が少なくても借り換えの方がお得に返済していける傾向になりやすいです。
借り換えの費用の中で大きいものが登録免許税と保証料のため、借り換えたいときの残高によってかかる費用が変わってきます。
借り換え費用が出せそうにないが、利息の削減が大きく見込めるのであれば、借り換えに伴う費用はローンを組むこともできます。
一方で、一部繰上げ返済では返済期間を短くできるため、精神的には楽な部分もあるかもしれません。借り換えでは、返済期間の短い住宅ローンにかえることもできます。
しかし、借り換えで返済期間を縮めようとすると、金利の差が少ないと毎月の返済額が増えてしまうかもしれません。
返済期間が短いほど借り換えに伴う保証料が少なくなりますので、余裕がある借り換えであれば、返済期間も短くできれば利息がより減らすことができてお得になります。
ローンの契約内容や控除(減税)額で結果は異なる
住宅ローンを組むときのプランや、固定金利、変動金利どちらで契約したのか、夫婦や親子の連帯名義ではないか、住宅ローン控除の金額などにより、利息がどの程度お得になってくるのかが変わってきます。
ご自身の住宅ローンの契約内容や減税、控除額などを比較しながら、借り換えのほうが良いか、それとも繰り上げ返済をおこなっていく方が良いか判断をしていきましょう。
借り換えを検討している方はマニプラのトップページでご紹介の一押しプランも参考にしてみてください。
<補足1>借り換えにかかる費用
保証料は保証会社を利用する住宅ローンで払います。保証料は借入年数に応じて100万円あたりの金額が決まっています。
保証会社によって多少の差はありますが、借入期間30年で19,137円、15年で11,982円程です。
借入時に一括払いした場合は、予定よりも繰上げ返済で早まった部分は戻り保証料がある場合があるので、戻り保証料によっては借り換え費用の負担が想定よりも減るかもしれません。
また、保証料は一括の前払いのほか、毎月の金利に上乗せする後払いが選べることもあります。この場合は、毎月の金利に+0.2%することが多いです。
借り換えの際に後払いを選ぶと借り換えに伴う費用が少なくてすみます。
印紙税は借入額が1,000万円超、5,000万円以下で2万円です。借り換えの時は新しい住宅ローンの契約の際にかかります。
手数料は保証料がかかる場合は、銀行により異なりますが3万円(消費税別)または5万円(消費税別)のいずれかのケースが多いです。
保証料がかからない住宅ローンでは手数料が借入金額の2%程かかることがあります。
全額繰上げ返済手数料については銀行はもとより、適用されている金利プランが固定金利か変動金利かによっても異なります。
変動金利選択時は数千円、固定金利選択時は3万円~5万円程かかることもあります。インターネットバンキングなど、所定の条件で全額繰上げ返済に手数料がかからない銀行も一部にあります。
登録免許税は借り換えの場合は債権額×4/1000になります。他に司法書士への報酬が必要です。司法書士によって報酬額は3~10万円ほど幅があります。
<補足2>繰り上げ返済の種類
一部繰上げ返済には期間短縮型と返済額軽減型があります。
期間短縮型は返済年数が短くなります。ボーナス併用なしの場合はひと月分の元金ごとに繰り上げて返済ができます。ボーナス併用の場合はボーナスを含めた半年単位の繰上げ返済になります。
返済額軽減型は返済年数はそのままに毎月の返済額を減らします。期間短縮型に比べて利息の削減効果は低いと言われます。